土壌改良手法の高効率化とモデル展開装備
研究タイトル
根圏土壌におけるCs、Kの挙動把握
目的
ダイズは土壌の交換性K含量だけでは説明がつかない事例も多く、安全な栽培のためにはダイズの放射性セシウム吸収に関連する土壌、作物要因を明らかにする必要がある。
今年度の活動内容と課題
水分条件を変えてダイズを栽培し、根圏の水・溶質濃度や、ダイズのセシウム濃度、吸収に関わる遺伝子発現を解析する。根圏土壌の観察はその手法の難しさから研究例が少ないが、改良した根箱を用いることで水分を目標値に保ち、数mm単位で土壌を採取する。
来年度の事業内容と方向性
栽培条件別のダイズの吸収メカニズムの変化や根圏土壌域での精度の高い水・溶質移動モデルを構築することで、セシウムを吸収しやすい栽培条件を提示でき、安全なダイズ栽培に寄与することができる。
(本件連絡先)
食農学類 二瓶 直登 教授
低投入・持続的生産体系に適した作物の選抜と生産体系の構築展開
(浜通り地域の農産物の6次化に必要な微生物類の特性評価も含む)
研究タイトル
福島県の発酵食品に生息する乳酸菌に関する研究
目的
乳酸発酵により、漬物が作られ、味噌、醤油、酒にも乳酸菌は関与する。農産物を発酵することにより、高付加価値化を図る。
今年度の活動内容と課題
・微生物に関する研究基盤の構築(継続中)
・福島県産の植物、発酵物から乳酸菌の分離
・分離した乳酸菌の特性解析
来年度の事業内容と方向性
・浜通りの発酵食品に関する調査
・市場調査、課題抽出
・乳酸菌と農産物の発酵、評価
(本件連絡先)
食農学類 熊谷 武久 教授
「もうかる農業」のためのシステム構築展開
研究タイトル
「もうかる農業」の確立のための価値共創システムの策定
目的
農産物生産、流通、消費・生活の各局面でのニーズとシーズをマッチングさせる仕組みの策定
今年度の活動内容と課題
復興支援や商品開発について、浜通りの住民のニーズと地域外の住民(消費者、支援者)の意識等の相違に関するWeb調査を実施
来年度の事業内容と方向性
前年度のWeb調査の結果を踏まえて、浜通りの住民への追加調査を実施し、これまでの経年的に行われている各種調査結果と合わせて復興のために有効な商品開発や各種システム構築に係る優先順位と方向性を検討
(本件連絡先)
食農学類 河野 恵伸 教授
除染水田産米の貯蔵物産の蓄積構造評価と地域・児童・生徒等への教授
研究タイトル
浜通り地域における米の品質・食味特性の明確化と栽培制御による高品位安定化
目的
浜通り地域産米は品質・食味が安定しない、あるいは、福島県内の他地域ほど高くはないとの指摘がある。本活動では、複数年度にわたり米の品質・食味特性を明らかにし、栽培制御によって高品位安定化する方法を開発することを目的とする。また、浜通り地域産米の風評払拭に寄与する科学的根拠を明示する。
今年度の活動内容と課題
おもに対象4市町村(飯舘村、大熊町、川内村、南相馬市)で営農を再開した水田で栽培され収穫された米を対象とし、品質・食味特性を調査する。また、炊飯米の微細構造的特徴を走査電子顕微鏡観察により明らかにする。本年度の成果はこれまでの複数年度の成果と比較して年次間変動ならびに環境変動の影響を明らかにする。
来年度の事業内容と方向性
対象4市町村(飯舘村、大熊町、川内村、南相馬市)を中心に、営農再開水田で栽培され収穫された米の品質・食味特性の変動とその要因を明らかにする。とくに、年次間変動ならびに環境変動の影響を検討し、それを克服し風評を払拭する科学的根拠を明らかにする。
(本件連絡先)
食農学類 新田 洋司 教授
除染された農耕地の土壌肥沃度の回復と増収技術の展開
研究タイトル
除染された農耕地の土壌肥沃度の回復と増収技術の展開
目的
1)飯舘村の除染により表層削除で地力が落ちた水田で、稲わらを収穫後水田に戻さないホールクロップサイレージを行い、土壌有機物をどのように確保して地力を高めるかを実証する。
2)また、増収・減肥作用を持つバイオ肥料「バチルス属細菌」を利用し、除染で肥沃度が低下した水田等で各種作物にバイオ肥料を施用し、収量増加効果を検討する。
今年度の活動内容と課題
1)飯舘村の農業従事者と連携し、高いバイオマス生産を有する飼料用米「モンスターライス4号」(東京農工大学が富岡町で栽培技術確立)が高度が高い飯舘村で栽培可能であることが分かった。また、サイレージの生産量は従来の飼料イネより大きいことが確認された。
2)モンスターライス4号とエゴマにバイオ肥料(ゆめバイオ)を施用し、圃場での生育を調査した結果、飯舘村の除染後農地でも接種効果が出現することが分かった。
課題)飯舘村の水田等は除染により、土壌の物理性が悪化し、透水が阻害されて湿害が生じている。土壌肥沃度の回復とともに、土壌の物理性の改善手法が必要である。
来年度の事業内容と方向性
1)モンスターライス4号とエゴマの試験圃場に2022年3月にヘアリーベッチを播種し、緑肥作物の肥沃度増進効果と、ヘアリーベッチは深根性で、土壌の透水の改善が期待できるので、栽培試験を試みる。早生種が標高が高い飯館村で栽培が可能かも試験する。
2)緑肥とバイオ肥料の施用効果でモンスターライスのサイレージ量やエゴマの収穫がどの程度増加できるか評価する。
(本件連絡先)
食農学類 横山 正 客員教授